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現状打破への渇望と怒りを

変革と連帯の行動へ!

 

 総選挙の結果と展望

  八木沢二郎

自民党大敗の原因

 

 自(公)政権は労働者・人民の怨嗟の中で打倒された。自民党の大敗は、以下述べるような意味で゛二重の敗北だった。

 第一は、言うまでもなく、新自由主義、市場原理主義―具体的には小泉―竹中路線のもたらした労働者・人民の惨禍への反発による。労働者派遣法等による非正規雇用の増大や正規労働者にも及ぶ賃金の抑制や労働強化、そしてそのような事態を緩和すべき社会保障制度―年金、健康保険、雇用保険等の劣化である。

 第二はいわゆる ゛55年体制 の最終的崩壊―政・官・財の癒着による国民諸階層への利益配分方式の崩壊による。このことによって従来、自民党の強固な基盤だった農業、中小企業、医者、特定郵便局等の自民党への支持が失われ、例えば小沢は農民への個別保障制度を提起する事で巧みにそこにつけこんだ。この両者とも御手洗プランに表現された多国籍企業を中心とする独占ブルジョアジーの政策たる新自由主義の帰結だった。渡辺治氏等が夙に指摘(ハーヴェイ『新自由主義』中の渡辺論文)しているように、日本の新自由主義は1970年代以降それまでの福祉国家、内包的資本蓄積様式の行き詰まりの中から生み出された多国籍企業を軸とした外延的強奪的蓄積方式という他国との共通性を持つと同時にその特殊性をも持っていた。

 その第一は、米・英に対して独と共に相対優位の競争力を有していた日独独占(1980年代のジャパンアズナンバーワン)の本格的新自由主義の導入は米・英におよそ20年遅れた。

 第二に、そのことも関連してサッチャー・レーガンに代表される米欧の新自由主義が従来の福祉国家=ある種の階級同盟の粉砕の上に成立したのに対し、1960年代日本の民間独占資本は、企業内組合を利して(IMFJC)労使協調を取り付け ゛補足的反革命 としての国労解体を必要としただった。日本型新自由主義はこの労使協調のうえにバブル崩壊以降の国際競争力低下の中で本格化した。労働者派遣法等の規制緩和、社会保障制度の劣化である。第三の特徴はそのような労働者階級にたいしてだけでなくブルジョアジー主流にとっていまや桎梏となった彼らのいう ゛国際競争力のない低生産性の分野 

農業、流通、中小企業等と  それを温存させている55年体制の利益配分体制を「構造改革」することが必要だった。従来の微温性から脱して徹底的にこれを行なうとしたのが小泉―竹中(奥田―御手洗)路線だった。そのことによって生みだされた人民の怨嗟が今回の選挙の結果であった。自民党にとっては、旧来の55年体制と新たな新自由主義の二重の破産でありそれゆえに大敗は必然だった。

 

 民主党政権の性格と我々の態度

 

 民主党は、自民党にたいしする労働者階級の反発だけではなく今述べた諸階層への利益配分の劣化から来る離反、あるいはそれを支えた官僚支配への反発をたくみに突いて大勝した。

 その政権の性格の第一は、敗戦後の一時期を除いてはじめて成立したブルジョアジーの主流(多国籍独占ブルジョアジー)の路線と一致しない政権であること。第二にいうまでもなくこの政権が、労働者・人民を代表、代弁するものではなく、ブルジョア主流と労働者・人民とを調停しあからさまな略奪的金融独占資本主義を修正しつつ資本主義の延命をはかるものであること。

 だが、近年の金融恐慌に示されている資本主義の矛盾の激化は、中長期的に見るならそのような ゛調停 を許容するものではない。歴史の教えるところではそのような調停が破れた後に来るものはボナパルチズム的(それは、日本では政界再編の名で行われるだろう)強権的ブルジョア政権と労働者・人民の対決である。

 我々が現在なすべき事は、@民主党政権のそのような性格を説明する事、A同時に彼らが公約した全身的内容の改良の実行を迫り、それを勝ち取る大衆闘争を展開し、かつその ゛調停的性格 による(すでに現れている)矛盾、妥協、裏切りを暴露すること、Bその事を通して次に予想される対決へむけて労働運動や市民運動の左翼的な統一戦線を構築することでなければならない。

 

                 地殻変動のうねりを変革の力へ

相模 潤

 

  不安と閉塞のうちに苦しむ社会の上に、カサブタのように腐臭を放ちながら張り付いていた自公政権は遂に取り除かれた。

 自民党の歴史的大敗は地殻変動のうねりと階級闘争の新しい時代の到来を予兆するものである。新自由主義的構造改革がもたらした貧困と格差の拡大、膨大な非正規労働者と「(派遣切り)の嵐、賃金削減、年金・医療・介護等の劣化と不安、また農業の切り捨てと流通再編―地方の病弊、人間の尊厳を顧みない弱肉強食社会、これらへの怒りと憤りは、もはや「自己責任」として抑えることのできないまでに拡大し、自民党に突きつけられた。またその現実に何ら責任力と居直った恥知らずに退場を宣告した。

 この意味で自民党の大敗北は新自由主義の敗北であると同時に、55年体制の最終的な解体をも意味するものであろう。55年体制の解体を推進した新自由主義は、自己の破産をもってそれを完遂したのである。

 民主党の勝利は「他に受け皿がない」という以外ではないが、2年前に「国民の生活が第一」を掲げて参院選に勝利して以来、党内右派を封じ込めながら、新自由主義がもたらす惨禍への怨嗟や保護策縮小への怒り、官僚支配への反発を吸引し、それを政権交代へと集約することに徹し、功を奏した。

 だがその「生活第一」路線も、「どのような社会を作り出すかという理念・思想」に裏付けられた「再分配と平等を重視する立場」から「社会保障を中心とした政策の再編成のビジョン」(山口二郎)として打ち出されているものではない。それは増大する労働者人民の不満と新自由主義路線が行き詰まり手探りの状態の多国籍資本・独占ブルジョアジーとを調停し、新ケインズ的な方策で再編しながら資本主義の延命の道を模索するというところにその位置がある。

 また「官僚政治の打破」も情報公開の徹底によって積年の腐敗を抉り出し、そして政治(家)が真に生きた大衆の怒りや希望と結びつき、社会のビジョンや政策のあるべき方向についての大衆的な議論で練り上げられるということである。民主党の顔がどこに向いているか、それは、時間と共にあからさまとなるであろう。

 いずれにせよ、民主党政権は安保―外交問題(向米一辺倒から日米同盟と中国・アジア重視の二等辺外交)も含めて、一方では多国籍資本―独占ブルジョアジーや米帝や官僚勢力や自民党残党等からの揺さぶり・抵抗・反撃、他方では人民の増大する不満と憤激の狭間で揺れ動き、隠然公然の内部抗争も生起させながら、次の諸衝突再編を準備することになるだろう。

 我々は自らの運動路線をさらに広げ深めながら、政権交代によって生じた新たな条件を運動の大衆的発展のために利用し、人民的要求(社会経済的要求から安保―外交問題に痛るまでの)を突きつけその実現のための大衆行動を追及する。と同時にその中で民主党政権の同要請・矛盾・中途半端・裏切りをその階級的位置・性格とともに明らかにし、独自の左派の極を作り出すべきこと、そのための左派の統一戦線を作り出していくべきであろう。

 1700万非正規労働者の労働―生活をめぐる社会運動の推進を軸にして、労働運動全体の発展を追及すること。この点では、民主党連合政権発足という機を生かして、この政権に派遣法抜本改正(日雇い派遣・製造業者派遣の禁止等々)の履行を迫る大衆行動が重要である。それとも連動して「公正・平等・連帯・協同」の社会を作り出していくという目標から抜本的な社会保障を戦い取っていく運動。終身雇用―企業福利の補完物としての社会保障の劣化には、その弥彌策ではない全く別の理念にたった社会保障の確立が追及されねばならない。「大きな政府」は間違いではない。必要なのはそれが組合・生協・NPO・作業所等種々の社会運動組織の連合による社会の自主的管理志向と結び合わされることである。

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