(6面)

大衆の手で変革の内実を!

前田裕晤

 

 昨年はチェンジの波がアメリカから日本に広がってきた。

 新しい年は、そのチェンジの中味が問われるし、更に、次の社会展望を見出し得るのか否かは、世界的な課題として問われる事になる。

 自・公政権を打倒した民・社・国の新政権は、「大衆一揆」「平成維新」などなどの位置付けを巡って諸論が相次いだが、権力の移行という上部構造の変化はあったにしろ、政権の基盤たる下部構造にはなんの変化もなく、地方は旧態依然の状況である。

 しかし、国家予算が事業仕分けと称して、国民の前にさらけだされる光景は、体制の違いはあっても未だ成し得なかった情報開示であるし、一端はじけたパンドラの箱は二度と元に戻らない。

 沖縄の米軍基地問題は、更に移転問題に止まらない日米安保体制が問われる課題である。60年安保締結以来、50周年の節目を迎える新年は、いびつな日米関係「軍事方肺同盟」と沖縄を通じて正面から立ち向かう事になる。

 沖縄での数度にわたる県民集会、普天間基地の撤去、辺野古移設反対の運動は、沖縄から本土全体の国民闘争に発展させる事が問われている。

 この運動は、かつての60年安保闘争や70年にいたるベトナム反戦、全共闘を上回る一大大衆運動を目指す必要がある。それは一政党・一党派、政治グループの枠を越えた共闘を築かねばならない。

 政治課題だけで大衆運動は拡がらない。一方で格差社会で呻吟する人々にとっては日常の生活課題が優先される。その市民の視点で運動の根源を見つめる事が私達に出来るのかが問われている。

 様々な市民運動が展開されている。環境、反原発等の運動と並んで全国各地に「9条の会」は7千を超えるといわれ、又「9条バンク」運動のように、左右の枠を超えて国民投票に向けた反対意志の登録運動もあるし、日本山妙法寺は上人を先頭に各地で平和を訴え、交流をし東京に向けて歩を進めている。

 これらの様々な運動は、社会のあり方を問う大きなヒンターラント(後背地)を作り上げるだろうし、その動きは政治に多大な影響を与える事になるだろう。

 沖縄基地撤去の運動が安保闘争になる方向性が、鳩山政権が県民の意志を汲んで基地撤去に日米交渉を進める支援力となる。

 旧来政権では出来なかった課題に、国民の意思を背景に立ち向かう事になるだろう。

 私見では、政党、政治組織は、組織維持・拡大が目的ではなく、この現実社会問題に関与しなくては存在意義は無い、と考えている。

 2010年を迎えて、私達がこの課題にいかに取組むかが問われる時が到来したことを確認し、連帯の挨拶をおくります。

 

「在特会」などのファシズム・差別排外主義を許すな!

流 広志

 

ファシズムは、大衆に(権利を、ではけっしてなくて)表現の機会を与えることを、好都合と見なす。所有関係を変革する権利をもつ大衆にたいして、ファシズムは、所有関係を保守しつつ、ある種の〈表現〉をさせようとするわけだ。−W.ベンヤミン「複製技術の時代における芸術作品」−

 

 世界的に不況が続く中で、差別・排外主義の台頭が起きている。なかでも「在日の特権を許さない市民の会」(代表・桜井誠)は、総連、民団、創価学会、西本願寺、新聞社、運動団体、行政、知識人、文化人などに、差別排外主義的攻撃を活発に加えている。

 「在特会」は、先月8日、「12月4日以降、京都市役所に各所から抗議の電話が寄せられた」として、京都の第一朝鮮初級学校に対する排外主義攻撃を行った。その報告文は、「未必の故意による殺意」、「大地をも揺るがす大歓声」、「不逞鮮人」などという修辞を並べ、極めて扇動的な調子で書かれている。

 19日には、前日付の東京新聞に載った『外国人いじめ不満はけ口』と題する記事に、自分たちは、「50年もの長きにわたって市民の公園が朝鮮人によって占拠されてきた。この不法を〈『語る』運動から『行動する』運動へ〉が指摘して是正させようとしている。日本人がこの日本列島で、朝鮮人によって差別されている。朝鮮人と一体となって愛国運動を敵視する東京新聞の存在を許してはならない」と猛反発し、本社に抗議行動を呼びかけた。

 さらに、東京飯田橋での、「在特会」の京都での4日の行動に抗議する催しに対して、妨害予告をした上で、押し掛けた。さらに20日には、京都府宇治市ウトロに在特会ら200人が押し掛け、22日には京都朝鮮学校への差別排外行動への抗議集会が約600人の参加でもたれた。かれらは、自らの差別的発言については、言論の自由を主張しながら、東京新聞の発言には、「存在を許さない」と矛盾したことを平然と語っている。「在特会」と行動を共にする「主権回復を目指す会」代表の西村修平は、同会の設立趣意で、「喫緊の重要課題は、支那・中共による対日併合・侵略と戦うことにある」と述べている。

 そして、もはや、「解釈や論評に時を費やす段階ではなく『敵』に向かって反撃する段階である」として、「保守運動の行儀の良さと訣別し、行動で以て自らの理念と言論を証明しよう」「座して死を待つ訳にいかない」「今、立ち上がらなければ、この後に立ち上がる時はない」と扇動している。それから、彼は、「明治維新は道理の正しさを堅持し立ち上がった少数が、巨大な権力を変革・打倒した。変革の原動力は、少数の正しき道理であって見かけの数ではない」など幕末維新の志士のごとく、少壮決起を呼びかける。

 かれらの思想には、ファシズムの特徴も見られる。かられが。「在日」の「特権」を攻撃する主張を掲げたことは、1922年2月24日に定められたナチ党の「25カ条綱領」の第4条の血縁原理による「国民」の規定、そして、6条の、法的権利・公職の民族=「国民」への限定、7条の「国民」生活の優先、「国民」が扶養不可能な場合の外国人の国外退去の要求、移民の禁止など、ナチの思想と多くの共通点を持っているのだ。

 また、この動きは、先の総選挙において惨敗し、政権からすべり落ちた自民党の巻き返しとして、民主党が成立に積極的な永住外国人の地方参政権に反対する意見書採択の動きを活発に行っていることとも連動している。

 1126日には、谷垣自民党総裁が、永住外国人への地方参政権付与に反対を表明した(時事通信)。12月2日には、「真・保守政策研究会」(会長・安倍晋三元首相)が、総会で、永住外国人地方参政権付与法案に反対する決議を採択した(産経)。14日には、連立与党の国民新党亀井代表が、永住外国人への地方参政権付与法案反対を明言した(時事通信)。「在特会」などは、こうした自民党の巻き返しの動きと連動するかたちで、永住外国人地方参政権付与反対の行動を全国的に展開しているのだ。

 永住外国人への地方参政権付与について、小沢民主党幹事長は、12日の韓国の大学での特別講義で、在日外国人の参政権付与法案を来年の通常国会に提出することを明言した(共同通信)。さらに、小沢幹事長は、同法案採択の際に、党議拘束をかけることを示唆し、党内の右派の動きを牽制している。

 東京では、8月14日、全国から、「在特会」に抗議する人々が結集して集会がもたられ、反撃の陣形の構築が呼びかけられた。関西においては、「6・30行動」が、労組、在日、知識人、諸運動団体・個人、キリスト者、仏教者などを結集し、こうした差別・排外主義者との闘いを続けている。

 

 「プロレタリアートは祖国を持たない」というマルクスの言葉に示されるように、プロレタリアートの解放を目指す共産主義運動にとって、民族・国境を越えたプロレタリア人民の国際主義的絆を強化することは原則的課題である。「持たざる者」=プロレタリアートは、「在特会」などのファッシォ、差別排外主義と闘争し、あらゆる差別・抑圧と闘い、プロレタリア国際主義を強化しよう!

inserted by FC2 system