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沖縄民衆と連帯し安保粉砕へ

普天間基地撤去辺野古移設阻止

 

安保の「捨て石」への怒り

自己決定権を求める沖縄

 

 日本に「復帰」(再併合)して38年の現在、沖縄の政治状況・世論は、この間の「普天間基地問題」をめぐって様変わりした。普天間基地の「県内(琉球弧内)移設」に反対し即時閉鎖―撤去を求める世論は、かつてない高まりを見せている。普天間の移設候補地にあげられている名護市長選挙では初めて移設反対派の市長が誕生。425県民大会には9万人を超える人々が結集し、5・16の普天間基地包囲行動には土砂降りの豪雨の中で1万7千人が「人間の鎖」を創り、普天間基地の撤去を日米両政府に強く突きつけた。

 戦後憲法(9条)と日米安保を両輪として形成されてきた戦後政治体制は、その矛盾を沖縄に「米軍基地の集中」という犠牲を強いること―沖縄を「捨て石」にすること―によって隠蔽してきた。こうした沖縄を安保の「捨て石」にし「基地重圧」の苦しみを強いる政治的な不公正・不平等に対して、それは日本(ヤマト)の沖縄(ウチナー)に対する民族的な差異に基づいた「構造的沖縄差別」ではないのか、という批判として表出している。いまや沖縄の反基地・反安保の闘いは、「沖縄の自己決定権」を潜在的なアイデンティティとして共有することによって、そのベクトルを模索しているといえる。

 5・14付琉球新報の「復帰38年・基地を問う日本を問う」で屋嘉比収氏(沖縄大学准教授)は「もはや他律的行為に頼るのではなく、沖縄に生きる私たちが自分の信念に基づいて淡々と主張し行動することが重要だ。そのように思うのは、95年以降に開催された県民大会に参加して会場の中のさまざまな場で感じた、静かな怒りを秘めながらゆるぎない意志を表明する多くの人々の存在である。その基盤には『沖縄のことは沖縄に生きる私たちが決める』という自己決定権の主張が確かな意志として広く共有されており、それがこれまでとは違って決定的に重要だと考えるからだ」と提起している。

 

「日本復帰」38年を問う沖縄の集会・行動

 

 5月14日午後6時から浦添社会福祉センターに於て、普天間基地即時閉鎖と「琉球弧内移設」を阻止しよう琉球・アイヌ・太平洋諸民族の自決権を獲得しよう韓国併合100年・安保改定50年・「日本復帰」38年を問う沖縄集会が約300人の参加によって開催された。集会では、韓国、グアム、フィリピンのゲスト、アイヌ民族からは3名が発言した。基調講演で仲里効氏は「琉球弧の自己決定権の樹立へ」と題し、沖縄に問われている思想と実践について次のような視点を提起した(引用は5・14付沖縄タイムス「復帰は併合プロセス 自己決定権問われる時期」より―編集部)。

 「結局、復帰は日本国家による沖縄の併合だった。72年5月15日以降、沖縄振興開発計画などで本土と沖縄との一体化路線が国家政策として打ち出され、貫かれていった。その結果、復帰後38年になる現在の風景は、一見すると政治的にも社会的にも日本の中の『一県』のように思える。しかし、日本国家の内部でありながらも、内部に収まりきれない『沖縄性』や『外部性』を開口部のようにもっている。そのような沖縄の特異性が復帰後も節目節目で表れ出る。〈中略〉 さらに無視できないのは沖縄の歴史意識の潜在的な力である。昨年は琉球処分130年、薩摩侵略400年ということで、あらためて沖縄には日本という国民国家を相対化しつつ、独自な主体と政治空間を創出していく思想資源の蓄積がある。例えば1960年代後半〜70年代には、近代にさかのぼって沖縄人の同化主義の病根を内在的に批判しながら、日本国家にノンを突きつけていく『反復帰』の思想があった。〈中略〉 言葉を換えて言えば『琉球弧の自己決定権の樹立』ということであり、イタリアの思想家アントニオ・ネグリが言う『構成的権力』につながる越境する思想を時代の先端に刻み込めるかどうかである。沖縄出身の地図を作成すること、果敢に未知に向かって踏み出すこと、今はまさにそういう時期なのだと思う。」

 沖縄が反対する「県内(辺野古)」移設を米国と合意して政府方針とする鳩山政権は、結局は沖縄の民意を切り捨て米国との関係を優先したことになる。しかも「県外」の自らの公約をほごにして「沖縄の頭越しに米国と手を握るというのでは、県民の目には二重の裏切りと映る」(5・21付朝日社説)。迷走の果て沖縄に新基地建設を押し付けるのは、沖縄の民意を愚弄するものだ。

米政府にとって訓練基地にすぎない普天間(海兵隊)は、嘉手納(空軍)や横須賀(海軍)はいざ知らず、決定的・戦略的に重要な基地とは見ていない。「10年以上も前の再編構想を前提にした日米合意の現行案は、金食い虫の迷惑施設を日本の負担で受け入れ続ける以上の意味があるのか、疑問だ」(5・22付日本経済新聞)という指摘は当を得ている。

 日本の経済成長戦略にとって欠かせない市場である中国を「仮想敵国」の一つとする日米安保そのものが、もはや「冷戦」時代の遺物でしかないのだ。時代錯誤の「脅威」を操り強迫観念にも等しい「抑止力」でマインドコントロールしながら、沖縄に犠牲を強いることによって成り立ってきた日米安保は今こそ葬る時だ。

(武佐武樹)

 

 

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