共産主義者協議会結成宣言

                         共産主義運動の再生を担う「新しい左翼の極」

 

準備会発足から共産主義者協議会結成へ

 

 プロレタリアート人民に、今日の社会における共産主義者、社会主義者の団結の一翼を担うべく、強固な闘う意志をもって共産主義者協議会の結成を宣言する。

 昨年12月、「準備会」発足以降、世界的な不況の拡大、支配階級の混迷が続くなかで、労働者・人民闘争が広がり、深まっている。年末以来イスラエルによるジェノサイドとも言うべきパレスチナ・ガザ攻撃が行われた。そこに住み続けることそのものが人民の抵抗である。フランスではサルコジ大統領の新自由主義に反対するゼネストとデモが、129日、250万人の規模で行われた。国内では、労働者のぎりぎりの生存を確保するための「年越し派遣村」の取り組み、3カ月を越える自主管理を打ち抜き、125日の「立ち退き・強制執行」後も持続する京浜ホテル争議が闘われている。

 資本主義・帝国主義が絶えず生み出す貧困と悲惨に立ち向かうこうした闘いの現実的な重さと引き比べれば、新たな米国大統領に就任した民主党・オバマの演説や演出過剰な就任式のなんと空虚なことか。巧言令色すくなし仁。大統領選挙から政権交代にいたる一連のお祭り騒ぎが、新自由主義の「やらずぶったくり」を見せつけられた米国国民の「チェンジ」の願いを幾ばくか反映しているにしても、である。資本家階級が支配する社会と政治のよどみと停滞を押し流す清冽なプロレタリアートの世界的な攻勢が求められている。否、それは既に始まっており、世界の労働者・人民闘争の呼びかけに応え、東アジアの一角からそのうねりに大合流するわが国社会の労働者階級人民の決起が待ったなしに要求されている。私たちはこの闘いに微力を傾け寄与するために共産主義者協議会を結成する。

 

 現在の情勢が私たちに問いかけるもの―協議会結成の目的

 

 私たちは協議会(準備会)の発足にあたって、次の4点を、共同して行うべき主要な活動課題として確認した。

1 全人民的政治闘争―@プロレタリアートの政治権力を目指す闘い、A反帝・反グローバリズムの国際連帯闘争への取り組み。

2 「社会運動ユニオニズム」など新しい労働運動に学び組織化を行うこと。

3 共産主義運動の再生を目指し、その連合・統一に向けた政治思想的論戦を推進すること。

4 上記目的のために『プロレタリア(無産者)の共同政治新聞 赤いプロレタリア』を編集・発行すること。

 この確認のあり方に、協議会結成の本来の目的とその政治的組織的性格も集約されている。その背景には、現在の激動する階級闘争の情勢と、これに大きく立ち遅れているわが国社会の共産主義運動主体との、厳然としたギャップについての認識と、何が何でもその克服を実現しなければならないという決意の共有がある。

 実践的課題設定から始めることの意味には二つの側面がある。一つは、今日の階級闘争が要求する課題の設定を、主として労働運動と国際連帯とに据えること、いわば政治路線的な問題であり、もう一つは左翼の立ち遅れ、主体のありようを転換させるための運動と組織に関わる問題である。どちらも階級闘争の現実が要求する共産主義運動の主客にわたる、相互に関連しあった重要な要素である。「それぞれの特殊な時点で、鎖の特殊な一環を、すなわち、鎖全体を掌握して次の環への移行を確実に準備するために全力でしっかりつかむ必要のある環を、みつけだすことができなければならない。」(レーニン『ソヴィト権力の当面の任務』)私たちの協議会結成のための確認は、ここでいうところの「環をつかむ」ということに相当する。

 新自由主義とグローバリゼーションの結果、生産と労働、市場は世界的なレベルで緊密に結合された。とりわけ、労働過程・市場のグローバル化とその階層的序列化は、貧困・格差・非正規・社会的排除の増大となって、労働者人民の生活を耐えがたいまでに圧迫してきた。だが、現在進行中の金融恐慌にはじまる大不況が示したように、世界資本主義とその盟主として政治的軍事的覇権によって君臨してきた米帝国主義は大きく動揺している。

 この米帝覇権の衰退と、新自由主義の破綻は、世界帝国主義支配の多極化、市場再分割戦の激化と、産業基盤そのものに及ぶ世界不況によって、歴史的な時代を画するものとなりつつある。そして新自由主義が、世界的な規模で遂行された資本家階級による、労働者人民の反撃とその国際連帯は、資本主義と帝国主義そのものとの対決とその政治的社会的変革の質を孕む。

 わが国社会における共産主義運動ないしは左翼運動の立ち遅れについては、かつて6070年代にわが国「新左翼運動」が総じて社会的に占めていた位置と、あるいは、韓国、フランス、ブラジルに代表される世界的な左翼的労働運動の今日的な先進例と、私たちの直面する現状とを比較すれば歴然としている。

 この二つの側面は、いずれも私たちの公的な生活の中での、左翼と共産主義運動の存在理由を問うものであり、これに積極的に応答することが協議会結成の一義的な目的であった。ここから、共同政治新聞が目指す公共的な言論による政治の場の構築も位置づけられる。そしてこれは喫緊の政治的諸問題に関する、共産主義運動を目指す諸政治グループ、諸個人の論戦の空間を創出し、さらに協働の場を拡大することが展望される。

 この活動はブント系諸グループ、さらには新旧左翼の結集による党建設に向けた政治的思想的作業を要求するが、それはそれぞれの責任において別個に進められる。しかしこれは、協議会が課題とする、上述の政治的活動を媒介とすること、実践によって験しにかけられなければならないことを不可欠の条件とすることも明らかであろう。

 

協議会の活動を推進する私たちの共通了解

 

こうした課題設定から、大づかみにして以下の三点ほどの私たちの共通了解をまとめることができる。これが『赤いプロレタリア』の編集方針、協議会の活動方向の導きの糸になる。

 

@     情勢認識について

 

 07年、08年にはじまる米国発金融危機は、世界的な大不況へと発展し、二つの帝国主義戦争以来の世界帝国主義の危機と国際階級闘争の高まりの時代がはじまろうとしている。新自由主義とグローバリズムの闘いが、プロレタリアと被抑圧民族人民の反撃の主体的条件である。

 米資本主義を主導力とした新自由主義の一時代のもとで、軍事的ケインズ主義政策と信用による消費の創出を基礎として、グローバルな規模で展開した資本・企業による、IT技術の発達を介した国際貿易と金融、為替・通貨取引とが、爆発的に拡大した。だが、サブプライムローン問題を契機とする米国発の金融破綻が引き金となって、世界的な過剰蓄積と過剰生産が露呈し、ドル基軸通貨体制の動揺と世界的大不況を引き起こした。同時に、米国主導の帝国主義列強国によるアフガン、イラクへの侵略戦争と軍事支配も、人民の抵抗闘争によって泥沼化と破綻の道を歩みつつある。BRICSに象徴される新興大国をまじえた多極化の趨勢があらわれはじめた。

 他方新自由主義に伴う資本主義的生産のグローバルな展開が、農業を含む全産業をくまなく巻き込み、世界的な規模での農民収奪、資源収奪、環境破壊をもたらし、その結果生じた貧困と格差の増大、社会的対立の激化が、民族対立と局地的戦争の拡大の背景を形成した。また同時に、労働過程・市場の国際的な結合とその階層的序列化によって、資本主義的生産の中心と周辺における労働者の対立と競争を強める資本攻勢が行われてきた。これは労働者の賃金・労働条件、権利に関する「南」の水準を「北」に持ち込み、非正規雇用の拡大、貧困・失業・差別・社会的排除を進めるものであった。こうした時代の転換とプロレタリア人民の世界的な規模での反転攻勢が、反グローバリズム運動と社会的労働運動の形をもって始まろうとしている。

 

A     グローバリズム運動・社会的労働運動と階級形成・権力闘争

 

 反グローバリズム運動の担い手が、労働者、農民、被差別大衆、性差や民族とエスニシティ、環境などに関わる社会的運動など、多種多様性をもって構成されていることはよく知られている。グローバリズムへの反撃を通じて、抑圧と差別との闘いのなかからそれぞれの相互理解と共感、団結をつくり上げ、国境をすら越える連帯と、不断の自己変革を行うことによって政治社会変革を行うことによって政治社会変革の主体を形成することにこそ、この運動の展望がある、その要をなすのがプロレタリアである。

 自分の社会的立場を「プレカリテ(不安定)」として感じ、差別と社会的排除の底辺から立ち上がりつつある、非正規雇用の労働者の闘いがその巨大な可能性を示唆している。わが国社会においても既に、全雇用者人口のうち、非正規は三分の一を超え、年収200万以下を「ワーキングプア」とすれば、その人口は1000万人を超えた。そして今、この働く人々が、「派遣切り」などとして、あたりまえであるかのように職場から放り出されている。利潤の極大化を目的とし、雇用の調整弁とするために、労働者の非正規化と権利剥奪を進めてきた資本の論理の帰結である。

 だが巨大独占資本も、自ら招いた経済破綻の大きさの前でうろたえている。これと正面から対決しなければ労働者の未来はない。非正規化が、労働者の自主的な選択の結果であるかのようにいうのは全くのデマである。労働者一人一人に、それを選ばせた社会的な理由がある。したがって、社会運動の諸要素に分け入り、これを労働者一人一人の運動として組織することが不可欠となる。社会運動の諸要素と労働運動との結合を通じて生活と権利を闘い取る道を切り拓いた社会運動ユニオニズムにその積極的な主張が集約されている。ここに今日の「労働者戦略」の核心がある。

 労働者一人一人の意志に基づく直接行動と団結によって職場実力闘争を進め、労働基本権(団結権、交渉権、争議権)に命を吹き込まなければならない。社会運動と結びついた労働者の闘いは、職場に限られない。永年にわたり労働運動や被差別大衆がかちとってきた社会的権利が、新自由主義によって、「自己責任」の名の下に次々と剥奪され、社会的に排除されてきたからだ。「セーフティネット」といわれる社会福祉、社会保障を、社会運動や労働運動を通して、権利として奪い返さなければならない。職場・地域から社会運動の基礎をもつ政治的主体・権力闘争主体の形成を展望する。

 資本の労働者人民への搾取・収奪が国際的なものであるから、これとの闘いは一国的なものであるわけには行かない。反グローバリズムの運動はこのことを実例によって示してきた。世界的に統合した資本と対決する労働者の国際的連帯によって示してきた。世界的に結合した資本と対決する労働者の国際的連帯によって、帝国主義と対決するプロレタリア国際主義を実行する。この新しい質をもつ労働運動が、さらに全人民的政治闘争の担い手となるとき全人民武装と権力闘争、労働者の自己権力・自己統治、ソヴェト運動・ソヴェト的統一戦線形成にいたる展望が開かれる。社会革命の要素を広範に含む政治革命の課題が提起される。ここに今日の階級形成の重要な課題があり、その実現のためにこそ前衛とイニシアティブ、ヘゲモニーの役割がある。

 

B 共産主義者の連合・統一

 

 プロレタリアートの団結と、その経済的解放を目的とする政治権力の獲得のために階級的革命政党が必要である。私たちはこれをマルクス主義、レーニン主義の歴史と経験に学ぶなかで繰り返し確認してきた。だが、この社会の現実の条件の下で、望ましく、また可能であるような共産主義運動の党建設の具体的なあり方は必ずしも自明なものではない。『共産党宣言』から『何をなすべきか』にいたる共通のテキストの理解についても、それぞれの立場からの解釈がある。

 例えば、1921年のロシア共産党第10回大会における「分派禁止」の決議が、ボルシェヴィキの組織規律を象徴するものとして理解され、その後の党内闘争のなかでスターリンによる反対派粛清の有力な根拠となったことはよく知られた事実である。社会の統治者としてのプロレタリアートの政治的成長を促すためには、共産主義運動の政党の中でのこうした抑圧は原則として否定されなければならない。「分派禁止」は、幼弱な労働者国家とそれを支える共産党の死活的な危機状況の下での非常措置、例外的規定であった。広範な言論の自由と、政治的結集としての革命政党形成の基礎条件だからである。したがって「レーニン主義的組織」=「鉄の規律」という類の通俗的な理解こそが改められなければならない。

 私たちを含むこれまでのブントの50年間に及ぶ政治・組織的な経験と教訓を振り返れば、事態はさらに具体的になる。自らの失敗や反省を率直に語ることから、協議会の活動の基礎が築かれなければならない。ブントは階級闘争の重要な局面でなぜ分裂を繰り返したのか? 党・組織観の幼稚さ、未熟性をあげつらっても問題の理解には到らない。「党の弱さ」を「弱い党主体」から解こうとするのはトートロジーであり、ここから性懲りもなく別の組織系譜への乗り移りが繰り返される。

 ブントの分裂は、その都度の革命戦略・理論問題、革命闘争の展望を開く先験的実践、大衆と結びつき大衆闘争の発展を促す活動スタイル、共産主義者の団結・組織・機関の維持などの契機をめぐって発生してきた。これらの契機それぞれは、共産主義運動の党にとって必要な要素であり共産主義者の党が、階級闘争の現実に向き合いプロレタリア人民と結びつく関係と場を不断の組織的集中の営為を重ねることによって意識的につくることに失敗したことを意味する。

 結局のところ「革命的活動の組織、構造、方法、内容を現実に理解するために、特殊な意味で学ばなければならない」(『コミンテルン4回大会での演説』)という、レーニンの世界革命の展望についての遺訓に差し戻されるのである。

 とはいえ、すくなくとも具体的な、焦眉の階級闘争の課題に共同して取り組み、プロレタリアート人民との団結を促し進めることは必要でもあり可能でもある。私たちが共産主義者の連合と統一から始めるというのはこの意味においてである。それを確固とした党建設の道に導くことは、協議会に結集したそれぞれの責任において実行される。

 

団結と闘争を呼びかける―共産主義者協議会に結集せよ!

 

 出発は着実慎重に行わなければならない。当面1年間は、@共同政治新聞の発行・読者の組織化、A大衆行動への連携した積極的参加、B共産主義・社会主義諸グループとの論戦の組織化と共同行動の追求、既述3点の活動の基礎固めに費やされる。

 世界的、一国的な政治経済の大変動が始まっている。資本主義・帝国主義はその危機の苦悶のゆえに、いっそう、搾取・収奪・抑圧・反動を強める。09年総選挙、大政治再編は避けられない。そして翌10年には、60年安保改定50年・日米軍事再編と連動して、「憲法審査会」の起動・改憲状況のせり出しが予測される。国民を二分する政治的大会戦の接近である。この状況のなかで、古い教条やスタイルにしがみつき政治組織的保守に終始することを否定し、階級闘争の現実に呼応して不断の自己刷新と世代交代を促す左翼の淘汰も急速に進むだろう。

 私たち共産主義者協議会は、この激動のなかでプロレタリアートの未来を示す旗を掲げる。「出陣のさいに自慢するな、帰陣のさいに自慢せよ」(レーニン『党綱領の改正によせて』)。この言葉を胸に刻み、東アジア・全世界の労働者階級人民との連帯と、プロレタリアの自己解放と権力のための闘争の、堅固な出撃陣地を築き上げる。私たちは、闘う労働者人民の仲間たち、こころある共産主義者の同志たちに、団結と闘争を呼びかける。共産主義者協議会に結集せよ!

                                  2009315日 共産主義者協議会結成総会

inserted by FC2 system